 デンマークのユーザー・デモクラシー 福祉・環境・まちづくりからみる地方分権社会
朝野賢司、生田京子、西英子、原田亜紀子、福島容子 新評論(2005年3月発行)320頁 \3,150 ISBN4-7948-0655-8 新評論出版案内 2005年2月号より
ユーザー・デモクラシー。聞きなれないことばである。デンマークを含めた北欧諸国には、私達を魅了する文化、生活、社会システムがあり、日本ばかりでなく世界中からも熱い視線が注がれている。しかし、これまで取り上げられたデンマークやそのほかの北欧諸国を紹介する文献の中にこのことばは見当たらない。難しい専門用語のように見えるが、意味するところはとてもシンプルだ。
デンマーク語で「Bruger Demokrati」と示されるそれは、日本語では「利用者民主主義」と訳すことができる。つまり、高齢者福祉、育児、教育、医療などのいわゆる社会保障における公共サービスを享受する特定のユーザー(利用者)を、地方自治体の政策決定および実施過程に直接参加させる概念である。デンマークは、1970年代に大規模な地方自治体の再編成がなされ、地方分権がヨーロッパでも最も進んでいるといわれる。
このユーザー・デモクラシーの概念が初めて政策に取り入れられたのは1983年の近代化プログラムの発表後であり、保守連立政権誕生を受けてからである。 公共支出の抑制が第一とされる中で、単に規制緩和や行政の効率化に走るのではなく、デンマークではユーザー・デモクラシーを法制化し、市民参加を推し進めることによって独自のモデルを構築してきた。
本書は、このデンマーク発祥の市民参加概念であるユーザー・デモクラシーの実現をさまざまな角度から論じることによって、地方分権型協働社会が前提とする市民参加とは具体的にどのようなものかを明らかにし、将来のわが国のあり方について問題提起することを目的としている。デンマークで縁あって出会った筆者を含めた若手研究者五人が、デンマークでの日々の暮らしや専門分野(行財政、高齢者福祉、まちづくり・都市計画、環境政策)を超えた議論を通して共有したデンマークの協働社会について、そのキーワードの一つであるユーザー・デモクラシーを具体的に紹介する。
はじめに
第一章 ユーザー・デモクラシーを支える地方分権型行財政システム
第二章 ネットワークが支える個別ケア
第三章 「小さな地区」における福祉の実践
第四章 高齢者団体
第五章 高齢住民委員会について
第六章 デンマークのまちづくり
第七章 地方環境エネルギー政策
おわりに
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